日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
小児期に発見された肺動脈主幹部瘤, 上行大動脈瘤, 肺動脈弁閉鎖不全症, 大動脈弁閉鎖不全症の1手術例
菅原 正明小熊 文昭平原 浩幸菊地 千鶴男
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2010 年 39 巻 3 号 p. 122-125

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抄録

肺動脈主幹部瘤(肺動脈瘤)と上行大動脈瘤を合併した症例の報告は稀である.小児期に発見された肺動脈瘤,上行大動脈瘤,肺動脈弁閉鎖不全症,大動脈弁閉鎖不全症の稀な合併例を経験したので報告する.症例は5歳時に肺動脈弁閉鎖不全・大動脈弁閉鎖不全症と診断された.次第に心拡大・半月弁逆流が増強し,肺動脈幹・上行大動脈も拡大傾向が認められたため17歳で手術を行った.術前検査で上行大動脈径55 mm,肺動脈幹径60 mmに拡大し,大動脈弁閉鎖不全3度・肺動脈閉鎖不全2度の逆流を認めた.大動脈弁輪拡大はなく,機械弁による大動脈弁置換術とダクロン人工血管による上行大動脈置換術を行った.肺動脈弁は3弁尖あったが弁尖が下垂しており,交連部を吊り上げ固定して弁形成を行った.肺動脈瘤は斜切開して幅広く切除し,縫縮術を行った.動脈壁の病理学的所見では,弾性線維減少・線維化・微小血管新生を認めたが,中膜壊死や粘液腫様変性は見られなかった.順調に退院し,術後2年で再発なく経過良好である.

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