日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
急性心筋梗塞後左室自由壁破裂の後に乳頭筋断裂を合併した1手術例
小林 純子吉田 英生加藤 秀之鈴木 登士彦毛利 亮柚木 継二久持 邦和大庭 治
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2010 年 39 巻 3 号 p. 129-132

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抄録

急性心筋梗塞後機械的合併症(心破裂,心室中隔穿孔,乳頭筋断裂)は急性心筋梗塞後の致死的合併症であるが,それぞれを合併することは極めてまれであり,報告例も少ない.今回,我々は心破裂後に乳頭筋断裂を合併した症例を経験した.症例は69歳,男性.一過性意識消失で救急搬送された.数日前発症の心筋梗塞で心破裂を合併し,冠動脈造影では右冠動脈閉塞と左冠動脈前下行枝の高度狭窄を認めた.下壁にほぼ止血状態の心破裂を認め,フィブリン糊とフィブリンシートでの破裂部修復と左冠動脈前下行枝への冠動脈バイパス術を施行した.術後経過は概ね良好だったが,10日目に突然酸素化不良となり,経食道心臓超音波検査にて乳頭筋断裂と高度僧帽弁逆流を認めた.同日,緊急僧帽弁置換術を施行した.その後の経過は概ね良好であり自宅退院していたが,退院3カ月後にうっ血性心不全にて再入院となり,超音波検査にて壁運動低下と心室瘤を認めた.患者は保存的加療にて軽快退院した.本症例では,乳頭筋断裂を予防するために右冠動脈への再灌流療法を施行すべきだったか,また心室瘤予防のために破裂修復にパッチを使用すべきだったかという問題点が示唆された.

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