日本心臓血管外科学会雑誌
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原著
胸部大動脈瘤に対する Gore TAG device の初期成績
——Japan SCORE による評価——
緑川 博文菅野 恵高野 隆志渡邊 晃佑島津 勇三
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2010 年 39 巻 4 号 p. 172-176

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抄録

胸部大動脈瘤(TAA)に対するGore TAG device(TAG)によるステントグラフト治療(TEVAR)の初期成績を検討したので報告する.2009年7月までにTEVARを施行した27例(男女比22:5,年齢53~88歳,平均70.5歳)を対象とした.病因は動脈硬化24例,先天性,放射線照射,感染が各1例,瘤形態は真性22例,解離3例,penetrating ulcer 2例,破裂有無は切迫4例,破裂3例であった.瘤の部位は弓部もしくは遠位弓部7例,近位下行12例,下行8例,最大瘤径は30~90 mm,平均61.3 mmであった.手術は全例全身麻酔下に,血管造影装置および透視可能な手術台の完備した手術室で行った.初期成績:手術時間は30~200分,平均89分であった.大腿動脈アプローチを20例,腸骨動脈アプローチを7例に行った.デバイス1個で処理しえた症例は10例,2個以上は17例であった.左鎖骨下動脈を閉鎖した症例は7例,再建を2例に施行した.全例留置に成功し,1例にのみtype 2 endoleakを認めた.合併症としては腸骨動脈損傷を2例,術後一過性腎不全による血液透析を2例に認めたが,脳脊髄合併症など他主要合併症は認めず,手術および病院死亡は認められなかった.Japan SCORE(JS)評価:JSによる術後30日以内予測死亡率および死亡率を含めた主要合併症予測発生率は,TEVAR群11.4±9.5%,35.8±16.4%,同時期に行った外科手術(OR)群7.6±6.5%,28.4±17.9%とTEVAR群で高い傾向にあり,実際発生した合併症はOR群で多かった.TAGによるTEVARは本邦では初期成績の段階であるが,JSによる外科手術と比較した評価においても優れた結果であり,その有効性が示唆された.

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