日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
Abdominal compartment syndrome と腹腔内感染の回避に vacuum assisted closure 療法が著効した1治験例
——MSSA 腸腰筋膿瘍を契機とする感染性腹部大動脈瘤+左総腸骨動脈瘤に対する手術経験から——
上原 彰史佐藤 正宏佐藤 裕喜滝澤 恒基杉本 努山本 和男吉井 新平春谷 重孝
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2010 年 39 巻 4 号 p. 177-181

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抄録

症例は68歳,女性.腰部から左側腹部,左鼠径部にかけての激痛および高熱を主訴に前医を受診した.CTで左腸腰筋膿瘍と腹部大動脈終末部周囲の低濃度領域を認めた.炎症所見高値で血液培養でMSSAが検出され,抗菌薬加療を行うが,経過中腹部大動脈終末部に仮性瘤を認めたため,当院に搬送となった.MSSA腸腰筋膿瘍を契機とする感染性腹部大動脈瘤+左総腸骨動脈瘤と診断し,右腋窩-両側大腿動脈バイパス後,腹部大動脈,両側総腸骨動脈の離断・結紮,および左腸腰筋膿瘍腔内大網充填術を行った.腸管および腸間膜浮腫が著明で閉腹不可能であったためvacuum assisted closure(VAC)療法とし,42日後6回目の手術で閉腹できた.経過中腹腔内感染は生じなかった.腸腰筋膿瘍に伴う感染性動脈瘤は非常に稀であり,また致死率の高い疾患である.VAC療法はabdominal compartment syndrome(ACS)回避だけでなく腹腔内感染回避にも有効である.

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