日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
急性 A 型大動脈解離術後に脳梗塞を発症したヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の1例
森嶌 淳友金田 幸三吉田 雄一平間 大介平尾 慎吾長阪 重雄横山 晋也西脇 登
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2010 年 39 巻 1 号 p. 17-20

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抄録

61歳,男性.歯科受診中に意識消失となり当院に救急搬送された.CT撮影の結果,急性大動脈解離(Stanford A型),心タンポナーデの診断にて緊急手術となった.術中所見では左冠尖と右冠尖の交連部のやや上方から右冠動脈起始部にかけて解離を認め,上行大動脈人工血管置換術,右冠動脈バイパス術を施行した.術後,明らかな麻痺はなく,食事摂取は可能であったが傾眠傾向になってきたため頭部MRIを撮影したところ多発性脳梗塞を認めた.同時期より血小板減少を認め,ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)を疑い,HIT抗体測定したところ陽性であった.ただちにヘパリン投与を中止したがその後も血小板減少傾向が続くためアルガトロバンの持続投与を開始した.開始後,血小板数は徐々に回復し,術後26日目正常域まで改善した.本邦ではHITに関して認識はいまだ十分ではなく,見逃されている場合が多いと思われ,若干の文献的考察をふまえ報告する.

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