日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
非同期16列 MDCT により診断し超緊急手術で救命し得た急性心筋梗塞後 blow out 型左室自由壁破裂の1症例
中尾 達也
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2010 年 39 巻 4 号 p. 182-186

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抄録

症例は67歳,男性.安静時の激しい胸腹部痛を主訴に当院救急に搬送された.心電図所見,心筋逸脱酵素の上昇より前側壁の心筋梗塞を疑った.また心エコー図により心タンポナーデと診断した.心タンポナーデの原因精査のため緊急MDCT(Multi Detector Row Helical CT)検査を施行したところ大動脈解離は認めず,心尖部から前壁にかけての造影不領域,左前下行枝#7の瀰漫性狭窄と第2対角枝閉塞を同定できた.その結果,急性前側壁梗塞に伴う心破裂と確定診断し,超緊急手術とした.手術室入室時にPEA(pulseless-electrical-activity)に陥ったため,直ちに胸部正中切開を施行して心タンポナーデを解除した.左室側壁に2カ所の破裂孔からの噴出性出血(blow out型左室自由壁破裂)を確認,人工心肺下にフェルトストリップを用いた直接縫合閉鎖にて止血し得た.術後は,間質性肺炎の増悪で呼吸管理に難渋したが術後43日目に軽快退院した.急性心筋梗塞後のblow out型左室自由壁破裂の救命例は稀であり,MDCTによる診断が有用であった.

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