日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
遺残大動脈縮窄症に対する上行大動脈-下行大動脈バイパス術の経験
関根 裕司池田 義古武 達也安 健太中塚 大介野中 道仁岩倉 篤山中 一朗
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2010 年 39 巻 5 号 p. 258-261

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抄録

症例は11歳の男児.大動脈縮窄症に対して,生後8日(左鎖骨下動脈-下行大動脈),11カ月(上行大動脈-前回人工血管),2歳時(2回目人工血管-下行大動脈)に人工血管バイパス術を施行した.遺残縮窄部の増悪,心肥大の進行,上行大動脈の拡大傾向を認め再手術の方針となった.胸骨正中切開による上行-下行大動脈バイパス術を選択した.横隔膜直上の後面心膜を切開することで下行大動脈の良好な視野を得た.大腿動脈送血,右房脱血にて部分体外循環を確立し心拍動下に手術を行った.まず,14 mmのWoven Dacron graftを下行大動脈に吻合後,下大静脈,右側肺静脈の上面,右房の右側を通し上行大動脈右側に吻合した.術後上下肢血圧較差は改善し,内服降圧剤も不要となった.本術式はさまざまな解剖学的形態を持つ遺残大動脈縮窄症に対する再手術時の重要な選択肢の一つと成り得るが,多少の圧較差は残存しており,また成長に伴う今後の問題点もあり注意深いフォローが必要である.

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