2010 年 39 巻 5 号 p. 276-280
症例は79歳女性.僧帽弁形成術・三尖弁輪縫縮術中,人工心肺離脱時に大量の気道内出血が発生した.ただちに人工心肺の脱血量を増やして肺血流量を減らし,二腔式気管チューブと気管支ブロッカーを用いて,出血部位である中間幹以下を孤立させ,気管支内タンポナーデ法を行って,止血効果を得た.その後,自己肺のガス交換不良のため,人工心肺装置をヘパリンコーティングシステムのV-A ECMOに移行し,手術を終了した.V-A ECMOは抗凝固剤非投与下に約11時間施行し,さらに止血が促進され,術後約14時間に気管支ブロッカーを抜去し,約19時間でV-A ECMOを離脱することができた.術後第26病日に退院したが,術後の胸部CTでは,右肺動脈(A5b)に仮性瘤を認め,気道内出血の原因は肺動脈カテーテルによる肺動脈損傷と診断した.