日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
エリスロポエチン誘導末梢血単核球細胞移植が奏効した重症虚血性潰瘍を伴う Buerger 病の1例
木下 肇神原 保黒部 裕嗣元木 達夫菅野 幹雄吉田 誉北市 隆佐田 政隆松本 俊夫北川 哲也
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2010 年 39 巻 1 号 p. 29-33

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抄録

エリスロポエチン誘導末梢血単核球細胞移植が奏効した重症虚血性潰瘍を伴うBuerger病症例を報告する.48歳時に同症と診断され,治療されたが,徐々に指潰瘍と疼痛により社会生活に支障を来すようになり,細胞移植治療を行った.細胞採取の前処置として,2週間前にエリスロポエチンを皮内投与し,その1週間後に2回目投与と400 mlの貯血目的の瀉血を行って,骨髄から末梢血へ内皮原性幹細胞の動員を図った.アフェレーシスにて末梢血より単核球細胞を採取し,患肢手掌の筋肉内に移植した.1カ月後に,患肢手指の血流に改善を認め,指潰瘍と疼痛は消失した.随伴する有害事象を認めなかったが,この細胞移植の効果は一時的で,潰瘍は3カ月後に再発した.そして計3回施行した細胞移植のたびに,この潰瘍改善効果は確認され,最長6カ月発生しなかった.本治療はBuerger病の難治性潰瘍に対して,低侵襲かつ安全な治療となる可能性がある.

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