日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
Aspergillus 感染性仮性瘤および感染性心内膜炎の1例
——冠動脈バイパス術後,仮性瘤形成を繰り返し感染性心内膜炎を合併した症例——
幾野 毅榎本 栄山本 賢二坂本 泰三
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2011 年 40 巻 3 号 p. 120-124

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抄録

症例は76歳,男性.2002年,不安定狭心症に対し冠動脈バイパス術4枝(LITA-LAD#8, Ao-SVG-#9-HL-#4PD)を施行した.2005年9月,グラフト中枢吻合部に仮性瘤を認め,大伏在静脈グラフトが閉塞した.仮性瘤に対しパッチ閉鎖術を行うとともに,右内胸動脈に離断した前回の大伏在静脈グラフトを再建した(RITA-SVG-#9-HL-#4PD).2006年6月,仮性瘤再発を認め,超低体温循環停止下に人工血管(Gelweave®)を用いて広範囲にパッチ閉鎖を行った.組織培養は陰性であった.8月に仮性瘤再発を認めた.超音波では上行大動脈内に可動性のある腫瘤を認めた.Bentall手術を施行し,大動脈弁まで及んでいた疣贅および暗紫色の膿を可及的に除去し,大網を充填した.術中組織からAspergillusが培養された.腎障害がありMicafunginを使用したが,β-Dグルカンも300 pg/ml以上とコントロールが付かず,Amphotericin Bに変更した.しかし,敗血症にて13日目に死亡した.Aspergillusによる心大血管系への感染は稀で,診断後1年以上生存した報告は数例である.文献的生存例は,感染部の切除と早期診断により抗真菌剤を強力に長期間にわたり行っていた.本症の救命には早期診断と治療が有効であり,文献的考察を踏まえて報告する.

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