日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
術後輸血関連急性肺障害を来たした胸部大動脈瘤の1手術例
島田 勝利田中 裕史松田 均佐々木 啓明伊庭 裕宮田 茂樹荻野 均
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2011 年 40 巻 4 号 p. 164-167

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抄録

症例は84歳男性.遠位弓部大動脈瘤に対し,順行性選択的脳灌流を用いて,弓部大動脈全置換術を施行した.ICU入室直後より血圧低下と著明な低酸素血症がみられ,胸部単純X線写真およびCT検査で両側肺水腫像を認めた.心エコー検査では左心室の虚脱を認めた.急性肺障害の原因として輸血関連急性肺障害を疑い,人工呼吸管理下にステロイドパルス療法,シベレスタット投与を開始した.手術侵襲,超低体温併用体外循環,腎不全,慢性閉塞性肺障害,高齢などがあり,呼吸管理に加え循環管理,腎不全治療に難渋し,集中治療室滞在期間は長期化(30日間)したが,術後78日目に軽快退院した.輸血された血液検体から,患者HLA抗原に対するHLA抗体が検出され,輸血関連急性肺障害と診断した.心臓・大血管手術では大量輸血を要する例もあり,周術期の急性肺障害の原因として輸血関連急性肺障害を鑑別診断として考慮することも必要である.

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