2011 年 40 巻 5 号 p. 244-246
症例は59歳女性.8年前から多発性筋炎と間質性肺炎の治療中であり,3年前に人工透析を導入されていた.BNP値の異常を精査中に,心エコーで中等度の大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症と左室流出路の腫瘤性病変を指摘され当科紹介となった.手術では,大動脈弁直下の僧帽弁輪石灰化部分と連続するように約7 mmの可動性のある腫瘤を認め,これを摘出後にSJM Regent19 mmを用いた大動脈弁置換術を行った.病理では,腫瘤内に腫瘍成分や炎症細胞の浸潤はなく単なる石灰沈着物との診断であり,僧帽弁前尖弁輪を起源とする乾酪様石灰化腫瘤が最も考えられた.経過は良好で術後20日目に退院した.急速に増大する乾酪様石灰化病変の多くは後尖弁輪に発生する心内腫瘤として報告されており,前尖弁輪を起源とするものは稀である.