日本心臓血管外科学会雑誌
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原著
80歳以上超高齢者 AS に対する CABG 合併 AVR 症例の早期・遠隔期成績
福村 好晃大住 真敬松枝 崇来島 敦史大谷 享史
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2011 年 40 巻 6 号 p. 265-268

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抄録

社会の高齢化に伴い80歳以上超高齢者の重症ASに対するAVRは近年増加しているが,手術適応や手術成績に一定のものはない.過去8年間の手術成績を検討し,術前特に多く合併する虚血性心疾患(IHD)に対するCABGの同時手術が,手術成績に与える影響を検討した.症例数は77例で,年齢は80~88(平均82.7)歳.男性18例(23.4%).術前IHDを43%,心不全を41%に認め,NYHA分類IIIもしくはIV度の症例が43.4%存在した.原則として生体弁を使用した.病院死亡は4例(5.2%)であった.冠動脈に有意狭窄を有する症例にはすべてCABGを同時に施行した(26例,33.8%)が,今回CABGを同時施行したAVRと冠動脈病変を有しないAVRにおいて早期・遠隔期成績を検討した.両者の術前状態に差はなかったが,手術・体外循環・大動脈遮断時間とも有意にCABG合併例で延長し,輸血も多く要した.しかし,ICU滞在・術後入院期間に差はなく,病院死亡率も差はなかった.遠隔期生存率も差はなく良好で心臓関連死はほとんど認めなかった.IHD合併例にCABGを加えることは,IHD非合併単独AVRに比しても,手術成績・遠隔期成績ともに差を認めず,超高齢者においても手術侵襲の増加は悪影響を及ぼさない.ゆえに,非超高齢者同様にCABG同時施行が推奨される.

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