日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
上行大動脈人工血管置換術を施行した Stanford A 型急性大動脈解離の術後早期に下行大動脈破裂を認めた1症例
毛利 教生島本 健坂口 元一小宮 達彦
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2011 年 40 巻 6 号 p. 302-305

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抄録

症例は82歳,男性.突然の胸背部痛,呼吸苦を自覚し,救急搬送された.造影CTで上行大動脈基部から左右外腸骨動脈に及ぶ血栓非閉塞型の急性大動脈解離を認め,上行大動脈前面に明らかなentryを認めた.27度低体温循環停止・順行性脳循環のもと,解離のentryを上行大動脈前面に確認し,上行大動脈人工血管置換術を施行した.術後経過は順調であったが,術後7日目心肺停止状態で発見され,心肺蘇生を施行,再開胸を行ったが,タンポナーデの所見はなく,心臓は虚脱していた.造影CTで,左胸腔に多量の胸水を認め,偽腔は開存していた.病理解剖では,左胸腔に血性胸水を1,500 ml認め,遠位弓部の偽腔が破裂していた.腕頭動脈の起始部にentryを認めた.今回われわれは,Stanford A型急性大動脈解離に対して,上行大動脈に存在したentryを切除し上行大動脈人工血管置換術を施行したが,術後早期に下行大動脈破裂を合併した症例を経験した.Stanford A型急性大動脈解離に対する術式選択と術後の下行大動脈の合併症について本症例を検討し文献的考察を加えて報告する.

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