日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
馬蹄腎を伴った腹部大動脈瘤の1治療例
泊 史朗澤崎 優小林 頼子井澤 直人石橋 宏之
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2011 年 40 巻 6 号 p. 314-317

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抄録

馬蹄腎は腎下極が癒合した腎奇形で,腹部大動脈瘤と合併することは稀である.動脈瘤手術に際して腎狭部および異所性腎動脈の処置が問題となる.症例は76歳,男性.他院にて径6.4 cmの腹部大動脈瘤および馬蹄腎の診断となり,手術適応として当科紹介となった.術前3D-CTでは,一対の正常腎動脈と馬蹄腎狭部に向かう異所性腎動脈径2 mm 1本,1 mm 2本を認めた.手術は腹部正中切開による経腹膜アプローチにて行った.馬蹄腎狭部を温存する形で腹部大動脈から両側総腸骨動脈をY型人工血管にて置換した.大動脈遮断後に腎実質の色調変化は認めなかったため,異所性腎動脈は再建しなかった.術後経過は良好で,第11病日に退院となった.腎機能は一過性に軽度低下したが,徐々に改善した.術後造影CTにて腎狭部梗塞を認めたものの,血清クレアチニン値はほぼ術前値にまで改善した.

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