日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
交通外傷で生じた僧帽弁乳頭筋断裂の1治験例
黒木 秀仁田渕 典之吉崎 智也
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2011 年 40 巻 6 号 p. 326-329

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抄録

外傷性僧帽弁乳頭筋断裂の1例を経験した.症例は59歳,男性.交通事故による多発外傷で当院に救急搬送された.受傷4時間後に突然呼吸状態が悪化したため,人工呼吸器管理を開始した.呼吸不全の原因検索のために積極的な心機能評価を要したが,前胸部の皮下気腫のために心雑音は聴取できず,経胸壁心エコー検査でも弁膜の描出が不可能で診断に難渋した.受傷から3日目に行ったSwan-Ganzカテーテル検査で著明な肺高血圧を認めた.続く経食道心エコー検査では,断裂した前乳頭筋が後尖中央付近のcleft chordaeを支えにして左室と左房の間を浮遊していた.鈍的胸部外傷による急性僧帽弁逆流と診断し,受傷から5日目に準緊急的に僧帽弁置換術を行った.周術期脳梗塞を発症し,術後40日目にリハビリ病院へ転院した.高エネルギー外傷では,僧帽弁乳頭筋断裂などの心損傷が起こりうることを常に念頭におくことが早期診断に重要である.

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