症例は38歳の男性.労作時胸痛で発症し,精査の結果80×60 mm大の左バルサルバ洞動脈瘤を認めた.左冠尖を占拠する動脈瘤によって左冠動脈主幹部が圧排伸展され,99%狭窄を呈していた.ベンタール型手術(Carrel patch法)と左前下行枝への冠動脈バイパス術を施行した.術後経過は順調で合併症はなかった.術後評価で,左内胸動脈-左前下行枝のバイパスは閉塞していることが判明した.狭心痛で発症した左バルサルバ洞動脈瘤の症例を経験し,基部置換を行った.バルサルバ洞動脈瘤の圧迫のみが原因で冠動脈狭窄をきたしている場合には,冠動脈バイパス術を付加しなくてもよい場合がある.