日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
広範に弁尖が破壊された活動期感染性心内膜炎に対して心膜補填なしに僧帽弁形成術を施行した1例
清水 篤中島 博之長田 裕明長澤 淳京極 方久
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2011 年 40 巻 2 号 p. 72-76

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抄録

僧帽弁位の活動期IEに対して積極的にMVPが試みられるようになっているが,弁組織が感染により高度に破壊され,広範囲の郭清を必要とした場合には,形成困難となりMVRが必要となる場合も多い.症例は27歳,男性.発熱が持続するために当院を受診し,心エコー検査で僧帽弁前尖に径13 mmの可動性のある疣贅が判明し,IEと診断され緊急入院となった.後交連を中心として広範囲に逸脱し,MRはsevereであった.巨大疣贅による塞栓症のリスクが高いと判断し,入院2日後に手術を施行した.僧帽弁を観察すると,後交連(PC)を中心にA3からP3の一部にかけて腱索の断裂による逸脱と弁尖の破壊,多数の疣贅の付着を認め,断裂した腱索の先端にも疣贅が付着していた.破壊の著しいPCとA3,P3の一部を疣贅とともに切除したが,比較的形態の保たれたA3は弁尖を温存して表面の疣贅を鋭匙,剪刀などで可及的に郭清するにとどめた.切除した弁尖に対応した弁輪部をcompression sutureにより縫縮し,弁尖を結節縫合で閉鎖した.28 mmのphysio ringを用いてMAPを施行し,逆流試験でMRの消失を確認した.術後経過は良好で,術後9カ月が経過し心機能は良好でMRの再発はなく,NYHA I°で外来通院中である.

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