日本心臓血管外科学会雑誌
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原著
大動脈緊急症に対するステントグラフト治療
青木 淳末澤 孝徳寒川 顕治多胡 護
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2011 年 40 巻 3 号 p. 89-93

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抄録

大動脈瘤破裂,急性大動脈解離破裂,外傷性大動脈損傷,大動脈気管支瘻・腸管瘻等による出血などの大動脈緊急症に対する外科治療は困難で,死亡率も高い.我々は2003年12月からステントグラフト(SG)を用いた治療を試み,15例(大動脈破裂または外傷性大動脈損傷9例,外傷性腸骨動脈損傷1例,大動脈気管支瘻3例,大動脈腸管瘻3例)に対して施行した.大動脈破裂または外傷性大動脈損傷9例中1例を外傷性脳出血のため失ったが,他の8例は合併症を生じることなく生存退院した.大動脈気管支瘻は,3例とも喀血は消失したが,一次性の1例を術後肺炎で失い,二次性の1例を多臓器不全で失った.大動脈腸管瘻は,一次性の1例は,術後SG感染を来すことなく良好に経過したが,二次性の2例はいずれも二期的な人工血管切除を要し,1例は感染の再発により死亡した.大動脈緊急症に対するSG治療は止血効果は優れていた.しかし,感染源が残存している場合は,二期的手術を必要とする症例がある.市販SG導入により,胸部大動脈の屈曲部および腹部大動脈にも対応可能となり,わが国でも大動脈緊急症に対するSG治療が増加すると思われる.

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