日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
高度石灰化上行大動脈を伴った大動脈弁狭窄症に対する脳分離体外循環併用低体温循環停止下大動脈弁置換術の1例
畠山 正治小野 裕逸棟方 護板谷 博幸
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2012 年 41 巻 2 号 p. 80-84

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抄録

上行大動脈の高度石灰化を伴った大動脈弁狭窄症(AS)に対し選択的脳分離体外循環(SCP)を併用した低体温循環停止下大動脈弁置換術を施行し良好な結果を得た.症例は60歳男性の慢性透析患者.心房細動を認めたため心エコーで精査したところ,ASの診断で大動脈弁置換術(AVR)の適応となった.胸部CTで上行大動脈に高度な石灰化を認め大動脈遮断は不可能であった.手術は右腋窩動脈から送血し右房脱血により体外循環を開始した.直腸温25°Cで循環停止とし逆行性心筋保護を開始,腕頭動脈の遮断に加え左総頸動脈から脳分離体外循環も併用した.上行大動脈末梢で離断し人工血管と末梢側吻合を行った.上行大動脈末梢に吻合した人工血管を遮断し,左総頸動脈の脳分離体外循環を終了し右腋窩動脈からの体外循環を再開し復温を開始した.機械弁によるAVR,上行大動脈中枢側と人工血管を吻合し体外循環から容易に離脱した.術後は脳障害もなく経過良好であった.右腋窩動脈送血は,腕頭動脈を遮断することで直ちにSCPに移行できる利点があり,上行大動脈を操作しない“no-touch technique”であるため,術後の脳障害の予防に有用であると考えられた.

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