2011 年 29 巻 1 号 p. 36-43
ラモトリギン投与後、発作の消失とともに脳波所見の著明な改善を認めた2症例を経験した。症例1は外傷性てんかん、重症心身障害者の32歳男性で、笑いを伴う複雑部分発作が日に数回みられていた。症例2は多発性海綿状血管腫に伴う局在関連てんかんの25歳男性で、週単位以上の頻度で複雑部分発作がみられ、時に二次性全般化発作をきたした。ラモトリギン投与前の間欠期脳波では、2症例とも全般性、左右同期性の棘徐波複合が持続し出現していた。ラモトリギンを開始し、維持量に達したのち発作は消失した。発作消失後の脳波では、ともに限局性の棘波の残存はみられるも全般化は認めなかった。加えて、症例2では、背景活動の正常化を示した。これらの変化に付随して、2症例とも認知面、行動面での改善がみられるようになった。自験例において、ラモトリギンはてんかん焦点からの興奮が全般へと拡延する過程に作用することで発作を抑制し、α活動を増加させることで認知機能や行動面での改善に寄与した可能性が示唆された。