日本森林学会誌
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論文
フェニトロチオン乳剤の樹幹散布によるカシノナガキクイムシの穿入防止効果
江崎 功二郎
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2008 年 90 巻 6 号 p. 391-396

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抄録

コナラ林およびミズナラ林においてフェニトロチオン乳剤(以下, MEP)をカシノナガキクイムシ成虫の発生前に1回, 地上から6mまで樹幹散布した。コナラ林の成虫発生密度は, ミズナラ林より5倍以上高かった。コナラ林において, イニシャルアタック防止率は散布後1∼3週間は100%であったが, 散布5週間後には50%に低下した。さらに, イニシャルアタック防止効果を示す未穿入木での♂捕獲数7頭以上は22回出現し, 20回は散布1∼5週間後に集中していた。また, マスアタック防止効果もこの期間示された。ミズナラ林において, イニシャルアタック防止率は散布5∼7週後まで100%であったが, それ以降は約80%に低下した。コナラ林において薬剤散布高までの穿入密度は無処理木より低く, 地上高0.5∼1.5 mの範囲で最も差が大きかった。これらのことより, MEPの樹幹散布はカシノナガキクイムシの穿入防止に有効で, MEPを1回散布すると, 3週間以上にわたり高い穿入防止効果を維持できることが明らかになった。

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© 2008 一般社団法人 日本森林学会
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