2010 年 43 巻 9 号 p. 935-941
症例は81歳の男性で,2006年1月急性胆嚢炎を発症し入院保存的治療で軽快したが,経過中に突然嘔吐・食思不振が出現した.腹部CTで胆嚢内に認められた径8 cm大の結石が十二指腸球部へ移動しており,上部消化管造影検査で胆嚢と十二指腸間に瘻孔を認め,胆嚢十二指腸瘻を通過した結石が十二指腸球部で嵌頓したと考えBouveret症候群と診断した.その後結石は自然に胃内へ移動し症状は軽快したが,内視鏡的結石摘出はできず,また十二指腸狭窄を合併していたため,開腹し瘻孔閉鎖,胃内結石摘出,胆嚢摘出,胃空腸吻合術を行った.Bouveret症候群はまれな疾患で,さらに結石が胃内へ逆行した報告はなく,文献的考察を加え報告した.