2011 年 44 巻 11 号 p. 1380-1388
症例は69歳の女性で,逆流性食道炎でかかりつけの近医で上部消化管内視鏡検査にて食道癌を指摘され,当科を紹介受診となった.生検で食道腺癌の診断とし,開腹下において腹部食道・胃部分切除,大彎側胃管再建,胆嚢摘出術を施行した.病理組織学検査でBarrett食道内に小型から中型の異型細胞が胞巣状に増生しており,免疫染色検査ではcromogranin A,CD56,synaptophysin陽性で,神経内分泌細胞癌と診断した.壁深達度はT1aで,食道裂孔部リンパ節に転移を認めstage Iと診断した.術後経過良好で術後14日目に退院となった.現在,術後2か月が経過しているが,再発兆候は認めていない.食道に発生する神経内分泌細胞癌はまれな疾患で,その中でもBarrett食道内に発生した報告は本邦ではない.文献的考察を加え,これを報告する.