日本消化器外科学会雑誌
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原著
胃癌術後の膵液漏に関する検討
田仲 徹行高山 智燮松本 壮平若月 幸平榎本 浩士右田 和寛中島 祥介
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2011 年 44 巻 6 号 p. 657-664

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抄録

 はじめに : 近年胃癌手術の安全性は向上しているが術後膵液漏は依然として一定の頻度で発生し,経過によっては死亡に至る重篤な合併症の一つである.そこで,膵液漏発症の危険因子および術後ドレーン管理について検討した.対象症例 : 2003年1月から2008年6月にD1以上のリンパ節郭清を伴う初発胃癌症例418例のうち,膵浸潤(T4)にて膵尾部脾臓合併切除を施行した4例,多量の出血を来した肝合併切除1例,縫合不全により腹腔内膿瘍を形成した11例(2.6%)を除外した402例を対象とした.また,膵液漏の診断はドレーン排液の性状または腹腔内膿瘍のCT所見を基準とした.結果 : 膵液漏の発症は402例中23例(5.7%)であった.多変量解析の結果BMI(P=0.004),術式(胃全摘術)(P=0.009),膵上縁リンパ節の郭清度(P=0.019)が独立した危険因子であった.危険因子別の検討では3因子とも含む高危険群での膵液漏発症率は16.2%と高頻度で,いずれの因子も含まない症例では膵液漏の発症は認めなかった.結語 : 胃切除後膵液漏危険因子はBMI,術式(胃全摘術),リンパ節郭清度(膵上縁リンパ節以上)であった.これらいずれの因子も含まない胃切除症例では膵液漏に関する予防的ドレーンは留置省略もしくは早期抜去ができる可能性が示唆された.術後はこれら危険因子を考慮したドレーン管理が必要である.

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