耳下腺癌の手術で顔面神経合併切除を余儀なくされることがしばしばある。特に顔面神経本幹を切除した場合には神経再建が困難な症例も多い。今回耳下腺癌の手術に際し,顔面神経本幹合併切除後に頸神経叢を用いて一次再建を行った症例について検討した。
2001年~2005年に顔面神経本幹とその分枝の合併切除が必要であった耳下腺癌5症例に対し,頸神経叢を用いて神経一次再建術を行った。5例中4例は術前に顔面神経麻痺を認めなかった。術後経過中の顔面神経麻痺スコア(柳原法)は中央値が32点と良好であった。
当院では頸神経叢を好んで使用しているが,その理由は同じ術野で大きく広がった樹枝状の神経が得られるので,各分枝の欠損をつながった1本の神経で修復できること,さらに採取が簡便であることである。移植神経の第一選択として頸神経叢が有用であると考えられた。