上方上顎亜全摘出術は,眼窩底,上顎の前内外側壁の欠損を生じ,眼球偏位,複視,鼻翼基部と上口唇の上後方への偏位,頬部の陥凹をもたらす。本欠損に対する遊離橈骨付前腕皮弁とチタン・メッシュ・プレートを用いた即時再建術式を報告する。採取組織は,採取部の一期縫縮が可能な細長い皮弁と,採骨部の骨折予防を考慮した薄い骨弁で挙上する。皮弁は,血管茎を被覆するための皮島と,口腔前庭鼻瘻の閉鎖のための皮島とに分割する。骨弁は,naso-maxillary buttress部と,眼窩下縁部に分割する。眼窩底はチタン・メッシュ・プレートで再建し,上顎洞内に露出したままにしておく。
本術式のコンセプトで2症例に再建術を施行し,外鼻と口唇の変形はなく,満足のいく結果が得られた。
本術式は,再建後の頬部が若干平坦になるという問題が残る。しかし,術式としては,容易で,信頼性があり,侵襲も少なく,良好な方法と思われた。