2008 年 49 巻 4 号 p. 319-322
表在性皮膚真菌症では,角質層に真菌成分が存在することで炎症が引き起こされる.この表在性皮膚真菌症モデルとして,培養正常ヒト表皮ケラチノサイトを用い,β-D-グルカンおよびTrichophyton rubrum,T. mentagrophytes 由来のトリコフィチン液を加え刺激し炎症に関わるサイトカイン ⁄ ケモカインの産生を検討した.培養液中のサイトカイン ⁄ ケモカイン濃度を測定した結果,IL-1 α ,IL-8の産生亢進が認められた.この結果より,表皮ケラチノサイトは真菌成分と接触するのみで,炎症反応を惹起しうることが分かった.次に,チオカルバミン酸系抗真菌外用薬であるリラナフタートが,ケラチノサイトからのサイトカイン ⁄ ケモカイン産生に対してどのような影響を及ぼすかを検討した.結果,リラナフタートは表皮ケラチノサイトのIL-8産生亢進を濃度依存性に抑えることが分かった.IL-8は強力な好中球遊走因子であることから,リラナフタートは殺真菌作用だけでなく,表皮ケラチノサイトのケモカイン産生を抑制することで,炎症に伴う好中球浸潤をも抑制しうることが示唆された.