心臓超音波検査法(以下心エコー)において,心腔内に血栓や腫瘍を認める場合がある.その際,塞栓症や外科的な治療を要する必要があり,特に左心房においては,血栓や粘液腫などが心原性脳塞栓症などの原因となるため,素早く的確な判断が必要である.しかし,右心系に関する血栓や腫瘍の報告は少ない.我々が経験した症例は,左片麻痺で発症した脳梗塞であるが,脳塞栓症が疑われたため,発症12病日に原因精査として行った心エコーで,右室流出路に約3.5cm長の可動性に富んだhyperechoic massを認めた.肺血流シンチで右下葉に一部欠損が認められ,併せてMRIでは茎のような付着点を流出路に持つmassが確認出来たため,腫瘍性の病変および血栓の両方の可能性を考えながら,外科的摘出術を考慮して抗凝固療法を行っていたところ,massの消失を認めた.下肢静脈エコーでは,左ヒラメ筋内静脈の拡張を認めた.経過からヒラメ静脈血栓がリハビリとともに右心室内に達し,付着していたと考えられた.消失してからの心エコーでは,右心系の負荷所見を認めず,さらに流出路に留まった器質的な原因を指摘出来なかった.右心系の中でも稀とされる右室流出路に血栓を認め,診断に苦慮したが,良好な転記を得たので報告する.