超音波医学
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原著
穿孔性十二指腸潰瘍の診断と治療法の選択における超音波検査の有用性
福井 寛也藤岡 正幸梶山 雄司上道 武三上 慎一高 智成安積 正作大原 龍彦臼井 典彦
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2010 年 37 巻 1 号 p. 17-24

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抄録

背景および目的:体外式超音波検査(以下,US)を中心に穿孔性十二指腸潰瘍(以下,本症)の診断と治療を行い,その結果,本症の診断と治療に有用なUS所見を得た.対象と方法:2002年3月から2008年6月までの6年4ヵ月間に経験した本症24症例を対象に,本症の診断と治療選択に大いに有用と考えられる,(1)十二指腸壁を貫いて液体や空気泡が行き来する流動性エコー所見,(2)十二指腸壁を貫く高エコー像,(3)遊離ガス像,(4)液体貯留像,(5)周囲臓器,特に,肝臓による穿孔部の被覆状態の5項目のUS所見についてretrospectiveに検討した.結果と考察:24症例のうち,流動性エコー所見は4例に,壁を貫く高エコー像は18例に,遊離ガス像と液体貯留像は,それぞれ,24例の全例に検出された.流動性エコー所見が認められた全ての症例は,直ちに本症と診断出来る.壁を貫く高エコー像や遊離ガス像,さらに液体貯留像は本症に高頻度に認められ,本症を診断する上で有用なUS所見であった.流動性エコー所見が認められた4例を含む,穿孔部が周囲臓器,特に,肝臓で被覆されていなかった5症例では,全例に手術が行われた.穿孔部が周囲臓器に被覆されていた19例のうち,被覆臓器は肝臓が16例で,大網や肝円索などの脂肪組織が3例であり,このうち,18例に保存的治療が適応された.以上より,穿孔部が肝臓を中心とする周囲臓器で全く被覆されていない場合は,原則的に手術治療を適応とし,穿孔部が肝臓を中心とする周囲組織で十分に被覆されていれば,原則的に保存的治療を適応としてよいと考える.結論:USは本症の診断と治療法の選択において有用な検査である.

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© 2010 一般社団法人 日本超音波医学会
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