日本鳥学会誌
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原著論文
水稲直播栽培におけるキジバトの被害対策としての代替餌の効果
山口 恭弘吉田 保志子
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2006 年 55 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

近年, 農作業の省力化のために, 水稲の直播栽培が各地で行われているが, 播種期の鳥害が問題となっている. 入水前の田にモミを播く乾田直播ではキジバトStreptopelia orientalisが播種後に集団でモミを採餌するために, 地域によっては大きな被害を出している. そこで本研究では野外大網室内の実験水田において, 大麦を用いた代替餌場を設置することにより, キジバトの水稲への被害を軽減できるかどうかを実験した. 実験は代替餌設置区と非設置区とを設け, キジバトの導入時期は前期 (播種直後から出芽揃い) と後期 (出芽揃い以降に前期と同じ期間) に分けた, 代替餌の有無と導入時期の組み合わせの2×2の4処理を1セットとし, 2000年5月1日から9月12日にかけて5セット繰り返した. 苗立ち数を処理区とキジバトが入れないようにしたエクスクロージャーとの間で比較したところ, 前期では代替餌設置区で有意差がなく, 代替餌非設置区で有意に少なかった. 一方, 後期の苗立ち数は代替餌のあるなしに関わらず, エクスクロージャーとの間に有意差はなく, 出芽揃い以降には被害が生じないことが示された. これらのことより被害の時期は播種から出芽揃いの時期であること, 代替餌の設置により被害が軽減されることが明らかとなった.

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© 2006 日本鳥学会
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