2006 年 55 巻 1 号 p. 7-17
本研究では, ハシブトガラスC. macrorhynchos におけるソナグラムの性差と雌雄間の発声器官における形態的差異を検討した. ハシブトガラスの鳴き声を記録した後, 深麻酔下において屠殺し, 開腹して, 性腺を観察することにより, 雌雄を確認した. ハシブトガラスの鳴き声を解析装置に取り込み, ソナグラム分析を行った. また, 舌から気管, 肺までの声道における長さや幅を計測した. その結果, オスのフォルマントの周波数はメスより低く, フォルマントの形成の関与が示唆される気管の長さにおいて, オスがメスより有意に長かった. ハシブトガラスのソナグラムにおけるフォルマントの性差は発声器官の性差に由来するものであると考えられた. 一方, ハシブトガラスの鳴き声のソナグラムにおいて, 倍音の周波数に性差はみられず, 倍音を決定すると思われる鳴管内部構造においても, 顕著な性差はみられなかった.