日本鳥学会誌
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原著論文
栃木県におけるオオタカ雄成鳥の行動圏の季節変化
堀江 玲子遠藤 孝一野中 純尾崎 研一
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2007 年 56 巻 1 号 p. 22-32

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抄録

栃木県において,ラジオテレメトリー法を用いてオオタカAccipiter gentilisの雄成鳥の繁殖期(6~8月)と非繁殖期(10~12月)の行動圏を調べた.14個体の繁殖期の平均行動圏面積は最外郭法100%多角形による推定で1,052 ha,95%固定カーネル法で899 haであった.行動圏面積は解析期間前半に比べて後半に有意に増加した.14個体中4個体で,観察点から巣までの距離と調査日の間に有意な正の相関があった.これらの個体では,解析期間後半に幼鳥への給餌頻度が減少し,巣から離れた場所でも採餌を行うようになった結果,行動圏面積が増加したと考えられる.6個体の非繁殖期の平均行動圏面積は最外郭法100%多角形による推定で2,609 ha,95%固定カーネル法で1,678 haであった.非繁殖期にも主に繁殖期の行動圏を継続して利用したが,その一方で巣から離れた地点も利用したため,平均行動圏面積は繁殖期の1.9倍となった.本調査地の行動圏は繁殖期,非繁殖期ともにヨーロッパや北米での報告よりも小さかったが,繁殖期と比べて非繁殖期の行動圏が特に小さかった.雄成鳥は繁殖期の行動圏を通年利用するため,繁殖期の行動圏はオオタカの保全上,重要な地域と考えられる.しかし,非繁殖期の行動圏内に冬期の重要な餌動物や採餌環境が存在するなら,非繁殖期の行動圏の保全も考慮するべきであろう.

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© 2007 日本鳥学会
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