日本鳥学会誌
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原著論文
カラマツ人工林による落葉広葉樹林の消失が鳥類群集に及ぼす影響
山浦 悠一加藤 和弘
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2007 年 56 巻 1 号 p. 9-21

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抄録

長野県中部の筑摩山地で,カラマツ人工林による広葉樹林の消失が鳥類に及ぼす影響を調査した.周囲の広葉樹林の割合が異なる広葉樹林と人工林で,越冬期と繁殖期にプロットセンサス法を用いて鳥類を調査した.Redundancy Analysisは,広葉樹林の消失に伴った広葉樹林内の鳥類群集の変動は小さいことを示した.広葉樹林内の繁殖期の常緑針葉樹選好者は,広葉樹林の消失に伴って出現頻度が減少していたが,樹冠探索者の出現頻度は広葉樹林の消失に伴って増加していた.Hierarchical partitioningは,広葉樹林の消失に伴う常緑針葉樹選好者の減少は,広葉樹林の消失自体よりもむしろ広葉樹林の消失に伴う広葉樹林内のウラジロモミ・コメツガの減少によって引き起こされていることを示した.また,人工林に出現しにくい種ほど,広葉樹林の消失に伴って減少する傾向が強いことが明らかになった.本研究の結果から,カラマツ人工林による広葉樹林の消失は強度に進行しない限りは鳥類に及ぼす影響は大きくはないことが明らかになった.また,生息地の消失によって減少しやすい種は,生息地の改変と生息地の置き換えによって失われる資源に依存している種である可能性が示唆された.したがって,生息地の消失に伴った種の減少を抑制・回復させるための手段として,生息地の改変によって減少してしまった残存生息地内の資源の回復,マトリックスへの資源の導入が挙げられた.

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© 2007 日本鳥学会
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