日本鳥学会誌
Online ISSN : 1881-9710
Print ISSN : 0913-400X
ISSN-L : 0913-400X
短報
北海道東部地域におけるワタリガラスの越冬状況
玉田 克巳
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 57 巻 1 号 p. 11-19

詳細
抄録

国内におけるワタリガラスCorvus coraxの生息状況は,北海道で稀な冬鳥とされているが,近年では観察記録が増えてきている.本研究では,釧路支庁管内において野外で確認したワタリガラスの記録をまとめるとともに,北海道東部を対象に文献調査を行い,近年のワタリガラスの生息状況と分布の変化について明らかにした.野外観察では94件の確認情報が得られた.確認情報はすべて内陸部のもので,環境は森林植生が89% を占めた.文献調査から124件の確認情報が得られ,野外観察とあわせて218件の情報が得られた.ワタリガラスは冬鳥として飛来していた.1969~1978年の間は3市町の海岸部に分布していただけである.1991~1997年には9市町,1998~2005年には16市町村で確認されており,ワタリガラスは海岸部のほかに内陸の市町村にも分布していた.北海道東部では,1990年代に狩猟と駆除によるシカCervus nipponの捕獲数が増加し,ワタリガラスがシカの残滓を食べているところも目撃されている.シカの捕獲数が増加した時期とワタリガラスの分布が拡大した時期は一致しており,シカの捕獲数増加がワタリガラスの分布拡大の一因になっていると考えられる.

著者関連情報
© 2008 日本鳥学会
前の記事 次の記事
feedback
Top