2009 年 75 巻 4 号 p. 307-313
コムギ赤かび病の圃場での動態を明らかにする目的で,栽培中のコムギについて発病穂の分布を初発から4日間隔で4回調査し,Iδ により発病穂の集中度の解析を行った.試験中,登熟後期にも新たな発病穂の出現が確認されたが,4回のいずれの調査時期でも新たに発病する発病穂は集中分布をしていた.さらに,各調査時までの累積発病穂の集中度は,調査時期が進んでも増大しなかったが,それらの集中分布の有意性は高まった.よって,発病穂は調査時期毎に独立して集中点を形成していることが示された.これらの結果は,2ケ年の試験において同様であった.以上より,赤かび病菌の伝染環において,圃場内の一次伝染源の子のう胞子が次々と飛散し,主要な伝染源として長期間寄与しており,発病穂の分生胞子による二次伝染の寄与度は小さいことが示唆された.