日本植物病理学会報
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原著
赤かび病抵抗性の異なるコムギ2品種における赤かび病発生と デオキシニバレノール蓄積に及ぼす感染時期の影響
大場 淳司吉田 重信對馬 誠也生井 恒雄
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2009 年 75 巻 2 号 p. 93-101

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抄録

赤かび病の感染がコムギの開花と関連していることは知られているが,これまで圃場レベルでコムギの開花小穂率(1穂あたりの開花小穂の割合)を基に開花期を定義し,穂の感染時期と発病およびマイコトキシン蓄積量の関係をあわせて解析した報告はない.本論文では,開花小穂率が40~50%に到達した時期を開花期と定義し,宮城県の主要コムギ2品種(赤かび病抵抗性「中」の品種シラネコムギと「やや弱」の品種ゆきちから)の穂の感染時期と発病程度およびマイコトキシン蓄積量の関係を3年間にわたり解析した.すなわち,圃場での出穂と開花時期の実態を調査するとともに,出穂始期から開花後30日にかけて両品種の穂に赤かび病菌を経時的に噴霧接種し,感染時期と発病程度およびデオキシニバレノール(DON)蓄積量の関係を調べた.その結果,接種時期別による発病程度およびDON濃度は,年次に関係なく両品種ともに開花期3日前から開花期当日の間の接種で最も高く,品種間で比較した場合には,ゆきちからがシラネコムギより有意に高かった.一方,開花3日前以前および開花期以降に接種した場合では,発病度は両品種間で有意な差は認められなかったが,DON濃度では品種ゆきちからで高かった.すなわち,赤かび病菌が感染する時期によっては,発病程度とDON汚染程度が必ずしも一致しないことが示唆された.このことから,より適切な本病の防除対策を講じるためには,品種ごとに開花特性を明らかにした上で,穂への感染時期と発病程度およびDON蓄積量との関係を把握する必要があると考えられた.また,開花穂率(開花小穂が見られた穂の割合)が防除指導のための基準となる開花期を推定する指標として有効であるかを検討するため,開花小穂率と開花穂率の関係を調べた.その結果,両品種ともに開花期間の開花小穂率(x)と開花穂率(y)との間には高い相関(品種シラネコムギ:y=22.792ln(x)−4.1541, R2=0.9642,品種ゆきちから:y=20.284ln(x)+7.065, R2=0.9171)が認められた.このことから,これら2品種の薬剤防除適期の把握には開花穂率を指標として活用しうることが考えられた.

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© 2009 日本植物病理学会
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