日本小児腎臓病学会雑誌
Online ISSN : 1881-3933
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総説
小児ステロイド抵抗性・難治性ネフローゼ症候群に対するLDL吸着療法
-病態と効果機序に関する検討-
上田 博章秋岡 祐子宮村 正和石塚 喜世伸末廣 真美子久野 正貴近本 裕子宮川 三平甲能 深雪服部 元史
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2010 年 23 巻 2 号 p. 154-159

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抄録

 一部の小児ステロイド抵抗性・難治性ネフローゼ症候群に対してLDL吸着療法 (LDL-A) は有効ではあるが,その効果機序は不明な点も多い。そこでLDL-Aの効果機序を明らかにする目的で,マイクロアレイ法,リアルタイムPCR法を用いて末梢血単核球 (PBMC) 中のmRNA発現を検討し,LDL-Aの効果機序に関連すると思われる候補遺伝子を抽出した。これらのうち,GZMB (グランザイムBをコードする遺伝子) に注目し,ステロイド感受性ネフローゼ症候群 (SSNS),ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群 (SRNS),コントロールを対象に,panT (CD3) 細胞におけるグランザイムB蛋白発現をフローサイトメトリー法で解析した。その結果,SRNSにおいてグランザイムB陽性T細胞は有意に増加していた。グランザイムBによるパーフォリン非依存性で “extraceller” な障害機序が注目されていることから,循環しているT細胞中のグランザイムBが糸球体濾過障壁を障害してSRNSの病態に関与している可能性,そしてLDL-Aの効果機序として,LDL-AによるグランザイムB発現制御が関与している可能性が示唆された。

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© 2010 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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