日本小児腎臓病学会雑誌
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—原著—
小児期発症IgA腎症のHLA解析
宇田川 淳子倉山 英昭松村 千恵子小林 靖幸土田 弘基酒巻 建夫秋草 文四郎
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1996 年 9 巻 2 号 p. 185-188

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抄録

 小児期発症IgA腎症が成人のIgA腎症と同一疾患であることを確かめ,その遺伝子背景が予後に及ぼす可能性を探る目的で小児期発症lgA腎症のHLA解析 (HLA-D/DR座) を行い,さらに,HLA-D/DR座が腎不全進展悪化因子となるか否かを検討した。小児期発症IgA腎症163例のHLA解析を行った結果,小児期発症IgA腎症はDR4抗原 (特にDRB1*0403,0405) 頻度が正常日本人に比し有意に高く,成人のIgA腎症の報告とほぼ同様の結果を得た。また,対象を経過良好群 (n=149)と不良群 (n=14) にわけ,HLA DRB1の遺伝子頻度を比較検討した結果,経過良好・不良群の両群では差がなかった。以上から,HLA-D/DR座は小児期発症IgA腎症の発症には関連するが,進展悪化には関与しないと考えられた。このことは,IgA腎症の予後を決定する主な要素は後天的環境因子など多面的であり,小児期における積極的な治療対策が成人期IgA症の予後を改善する可能性を示唆するものと考えられる。

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© 1996 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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