日本農村医学会雑誌
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原著
大規模地震災害が血液透析患者の栄養状態に与える影響
——各種血液生化学的マーカーおよび臨床症状の変動——
土田 恵美子佐藤 舞子倉持 元
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2009 年 58 巻 2 号 p. 54-62

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抄録

 我々は平成19年7月16日に新潟県中越沖地震 (マグニチュード6.8) による大規模地震災害を経験した。そこで大規模地震災害が血液透析患者の栄養学的変化を含む血液生化学的マーカーに及ぼす影響と災害による精神的ストレスおよび臨床的合併症の発生を調査するために,経時的に各種血液生化学的マーカーを測定しその変動および合併症の発生状況を検討した。新潟県中越沖地震では一般生活に必要なライフライン (電気,都市ガス,水道) が完全に復旧するまでに1か月を要した。多くの各種血液生化学的マーカーの変動および新たな合併症の発症は,被災後1か月までに集中しており,これはライフラインが完全に復旧するのに要した期間とほぼ一致した。これらの変化も被災3か月後になると回復および減少してくるのが認められた。しかし血清アルブミンのように被災後6か月を経ても回復しないものも存在した。また精神的ストレスの影響は被災3か月後より現れてくることも認められ,各種血液生化学的マーカーの変動および合併症の発症のピーク (被災1か月後) と精神的ストレスの影響を認める時期 (被災3か月後) には時間差が存在した。これらの点は今後の大規模地震災害後の血液透析患者の身体的および精神的状態に対しての総合医療的ケアを考えていくうえで非常に参考になると考えられた。

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© 2009 一般社団法人 日本農村医学会
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