2007 年 44 巻 9 号 p. 528-541
びまん性軸索損傷(DAI)は高次脳機能障害が存在するにもかかわらず,従来の画像診断で異常を指摘することが困難な場合が多い.我々は脳白質病変の検出に優れている拡散テンソル画像(DTI)およびDTIを応用した脳白質線維を3次元的に描出できるfiber tractography(FT)を用いてDAIの評価を試みた.対象は健常者9名と慢性期DAI患者9名.DAI群の高次脳機能障害評価では知的機能低下,注意障害,記憶障害,遂行機能障害などを認めた.従来のMRIでは異常をほとんど認めなかったが,DTIではDAI群で健常群と比較し脳梁,脳弓,前頭葉および頭頂葉皮質下白質において異常所見を認め,FTでは脳梁および脳弓線維の描出不良所見を認めた.DTIおよびFTはDAIの病変やその程度を描出することが可能であり,DAIの評価およびリハビリテーションにおいても有用な情報を与えてくれるものと考えられた.