日本臨床外科学会雑誌
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症例
膵神経鞘腫の1例
藤岡 重一関根 慎一渋谷 和人塚山 正市村上 眞也川浦 幸光
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キーワード: 膵腫瘍, 神経鞘腫
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2007 年 68 巻 5 号 p. 1276-1280

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抄録

症例は56歳, 女性, 胸やけを主訴に当院受診した. 腹部超音波検査では膵頭部背側に低エコーを示す腫瘤を認めた. 腹部CT検査では境界明瞭, 辺縁整の内部が均一なlow densityのmass lesionを認め, MRI検査ではT1強調画像ではlow intensity, T2強調画像ではhigh intensityの境界明瞭な腫瘤を認めた. ERPでは主膵管, 副膵管ともに異常所見を認めなかった. 腹部血管増影では腫瘍濃染像やencasementの所見は認められなかった. 術前の確定診断は困難であった. 腫瘍は膵鈎部に存在し, 腫瘍の部分切除は困難と判断, 幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した. 病理組織学的には腫瘍は細胞異型を欠く紡錘形細胞の増殖からなり, 免疫染色ではS-100蛋白染色陽性で膵原発の良性神経鞘腫と診断された. 膵原発の神経鞘腫は極めて稀で本邦では29例が報告されているにすぎない. 本症の術前診断は極めて困難とされている.

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© 2007 日本臨床外科学会
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