日本臨床外科学会雑誌
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症例
多発食道癌と多発胃癌の重複癌の1例
山中 秀高小野 要佐藤 達郎神谷 諭
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2007 年 68 巻 8 号 p. 1937-1942

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抄録

症例は飲酒歴 (ブランディー50ml/日×20年) を有する39歳の女性. 左反回神経麻痺による嗄声で入院し, 食道造影および上部消化管内視鏡で径6cm大, 気管背側へ浸潤する3型の胸部上部食道癌を認めた. また, 胸部中部食道に0-II bの中分化扁平上皮癌, 胃中下部に0-II cの印環細胞癌を3個認めた. また, 胃の非癌部でピロリ菌感染を認めた. 多発食道癌と多発胃癌の重複癌と診断した. 化学放射線療法による胸部上部食道癌の消失後に, 残存する食道癌と胃癌に対し食道亜全摘+胃全摘術を施行した. 摘出標本で胃には計5個の0-II cの印環細胞癌を認めた. 術後, アルデヒド脱水酵素 (ALDH2) のDNA検査にてヘテロ欠損と判明した. 自験例はALDH2のヘテロ欠損や変異によるfield cancerizationが関連した多発食道癌例であるが, 多発胃癌に関してもfield cancerizationが, ピロリ菌感染と共に要因である可能性が考えられた.

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© 2007 日本臨床外科学会
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