日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
門脈右枝結紮術後に肝切除術を行い長期無再発生存を得た肝細胞癌の1例
新井 勲永野 浩昭村上 昌裕野田 剛広門田 守人
著者情報
キーワード: 肝細胞癌, 門脈結紮, 肝切除
ジャーナル フリー

2007 年 68 巻 9 号 p. 2305-2308

詳細
抄録

症例は53歳, 男性. 1988年5月超音波検査にて肝右葉に径6cm大の腫瘤を認め, 肝細胞癌と診断された. 肝動脈塞栓術 (TACE) を施行し, 次いで肝右葉切除術を考慮したが, 慢性B型肝炎の併存に加え, CT volummetryによる切除率が64.2%であり, 術後の残肝機能が十分ではないと判断し, まず1988年10月に門脈右枝結紮術および胆嚢切除術を施行した. 3カ月後のCTで肝左葉は肥大し, 切除率が50%まで低下したことで, 耐術可能と判断し肝右葉切除術を施行した. 術後合併症は特になく退院し, 12年7カ月経過した現在, 無再発生存中である. 以上より肝切除後の残肝容量が不十分な場合には, 門脈枝結紮術は肝細胞癌の治療において肝切除術の適応を拡大する有効な方法になる可能性がある.

著者関連情報
© 2007 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top