日本臨床外科学会雑誌
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症例
空腸瘻孔と多臓器浸潤を伴った多発空腸悪性リンパ腫の1例
村田 祐二郎佐藤 裕二坂東 道哉服部 正一森 正樹洲之内 広紀
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2007 年 68 巻 10 号 p. 2526-2531

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抄録

症例は49歳の女性で, 嘔気・嘔吐, 3カ月で9kgの体重減少を主訴に受診した. 小腸造影X線検査で空腸から小腸への瘻孔を認め, さらに腹部CT・MRI検査で瘻孔部とは異なる病変が子宮・膀胱へ浸潤していた. sIL-2Rは4,290U/mlと高値であった. 開腹すると, Treitz靱帯より30cmの空腸に発生した腫瘍が, その部より肛門側20cmおよび80cmの空腸と瘻孔を形成し, さらにはじめの腫瘍より肛門側50cmの部位に独立した病変が子宮, 膀胱に浸潤していた. 病変部2カ所を含めた空腸切除と子宮摘出, 膀胱部分切除を施行した. 病理組織学的に悪性リンパ腫, Diffuse large B-cell lymphomaであった. 肉眼形態はそれぞれ潰瘍型, 動脈瘤型であった. 術後sIL-2Rは557U/mlとほぼ正常化し, 外来でR-CHOP療法施行中である. 小腸ML瘻孔形成の報告は, 本症例を含め11例で, 他臓器浸潤を伴うのは2例あり, 空腸・空腸瘻孔と多臓器浸潤を伴う例はなかった.

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© 2007 日本臨床外科学会
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