日本臨床外科学会雑誌
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症例
根治切除後の腹壁欠損を鼠径皮弁によって再建し良好なQOLを得ることができた腹壁浸潤大腸粘液癌の1例
加野 将之牧野 治文松原 久裕
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2008 年 69 巻 5 号 p. 1160-1163

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抄録

大腸粘液癌は進行が早く,また腹膜転移が多いとされ比較的予後不良とされている.今回われわれは腹壁へ広範囲に浸潤した上行結腸粘液癌に対し腹壁合併切除を施行し,長期生存および良好なQOLをえた1例を経験したので報告する.症例は70歳,女性.平成11年9月右腹壁に腫瘤を自覚したが放置していた.腫瘤は徐々に増大したため同年10月に近医を受診し精査したところ上行結腸癌腹壁浸潤の診断となり当科を紹介されて受診した.腫瘤は急速に増大し疼痛も増強したため同年11月緊急手術となり,結腸右半切除術,腹壁・肋骨合併切除を施行した.腹壁欠損部に対し,二期的に当院形成外科にて鼠径皮弁にて腹壁再建を施行した.術後は約4年間にわたり趣味のテニスを楽しむなどすることができたが,平成16年に局所再発をきたし,他院にて死亡された.積極的切除に加え他科との連携により良好なQOLを得ることができたと考えられる.

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© 2008 日本臨床外科学会
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