内ヘルニアは,腸間膜または腹膜の欠損部に臓器が嵌入する稀な疾患である.特徴的な症状がないためイレウスの診断で開腹手術を施行され確定診断にいたることが多い.症例は64歳,女性.S状結腸間膜の異常裂孔に小腸が嵌入していた.術前にS状結腸間膜に関連した内ヘルニアによるイレウスとの確定診断はできなかったが,腹部CTでは小腸がS状結腸の外側に位置しており,大腸および小腸の異常所見があった.イレウス症例においては開腹手術の既往の有無を問わず,常に内ヘルニアの存在を念頭に置く必要があると思われた.S状結腸間膜の穿通性欠損部に腸管が陥入する成人のS状結腸間膜裂孔ヘルニアは検索しえた範囲では,自験例が9例目で稀な症例であり,文献的考察を加えて報告した.