日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹腔鏡下直腸低位前方切除後に一過性虚血性大腸炎を合併した1例
川口 清瀬尾 伸夫太田 圭治浦山 雅弘渡邊 利広藤本 博人
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2008 年 69 巻 6 号 p. 1432-1436

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抄録

消化管手術後の虚血性腸炎は文献検索にて散見される程度であり,腹腔鏡手術後の報告はほとんどない.今回,腹腔鏡補助下低位前方切除後に一過性虚血性腸炎を発症した症例を経験した.症例は50代,男性.糖尿病,高血圧があった.直腸RaのSM癌に対し,平成18年1月下旬,手術を施行した.上直腸動脈は左結腸動脈分岐直後で切離(中枢側D2),直腸は腹膜飜転部の約2cm肛門側で切離,小開腹下に腸管を摘出した.切離部の血流に問題のないことを確認し,Double stapling techniqueで吻合した.手術時間は351分.第8病日の透視で,吻合部に狭窄や縫合不全なく,口側腸管にも異常なく,第13病日に退院した.しかし,その20日後,イレウス症状で再入院.精査の結果,吻合部直上から口側10cmにわたる虚血性大腸炎であったが,保存的治療で軽快した.腹腔鏡下手術・手技に原因があった可能性もあり,今後本術式の合併症として注意を要するかもしれないと考えた.

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© 2008 日本臨床外科学会
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