2008 年 69 巻 9 号 p. 2305-2310
症例は65歳,男性.血便,肛門痛を主訴に近医を受診し直腸腫瘍を認めたため精査加療目的に当院紹介となった.疼痛が強く全身麻酔下に生検を行ったところ直腸悪性gastrointestinal stromal tumor(以下GIST)と診断された.巨大な腫瘍は小骨盤腔を占拠しており被膜破綻なしに切除不能と判断しneoadjuvant chemotherapyとしてメシル酸イマチニブ400mg/日投与を開始したところ腫瘍の著明な縮小を認めた.イマチニブ治療不応期に注意しつつ手術時期を決定し投与9カ月後,腫瘍体積が30%以上減少したことを確認し直腸切断術を施行し被膜を破綻することなく腫瘍を摘出した.病理組織診断では広範に壊死した腫瘍の内部に一部新たな病巣の発育と思われる部分を認めた.術前化学療法によりGISTの手術適応の拡大が期待されているが,その期間の決定には十分な配慮が必要と考えられる.