2008 年 69 巻 9 号 p. 2377-2381
症例は20歳,男性.2004年9月右側腹部痛,嘔吐および発熱を主訴に当院受診.腹部CTで臍右側に周囲の炎症を伴う辺縁がhigh,中央がlow densityの約4cmの腫瘍を認めた.血管造影では空腸動脈の分枝からの栄養血管が認められ,選択的造影にて腫瘍の一部が濃染されたが,小腸造影下CTでは腫瘍は腸管外に存在していた.以上より炎症を伴う腸間膜腫瘍を疑い入院9日目手術を施行した.腫瘍は大網に覆われ横行結腸間膜に位置しており,横行結腸とともに摘出した.割面像では,腫瘍の中心部は褐色調で辺縁は灰白色を呈する充実性病変であった.組織学的には砂粒体を伴う硝子化膠原線維の豊富な腫瘍様病変であり,炎症細胞浸潤を認めたため石灰化線維性偽腫瘍(CFP)と診断した.CFPは若年成人の皮下や軟部組織に好発するが,腹腔内に発生した例は本邦において自験例含め5例のみであり,極めて稀であると考えられた.